「○○（俺）さん、それ絶対おかしいですって。騙されてますって。」

最初言われた時は「へ？」って感じではあった。
まったく予想にもしない言葉であったのだが、あえて見過ごしていた事でもあったんよ。

前にブログで合宿免許の話を書いたんだけど、その時に一緒だった渋谷のチーマーだったお兄ちゃんから言われた台詞ですわ。
外見はいかついんだけど礼儀もしっかりしていて、明るい好青年で一番の仲良しだったの。


何の話かといえば、当時俺の働いていた仕事のお金の事なんですよ。
19歳から5年間、住宅関係の職人さんをしていたのだな。

そのチーマーの兄ちゃん曰く、俺は給料をもっと貰わなきゃおかしいって言うんですね。
当時で日給1万円。こんなもんだべ？

「いや、5年もやってたら他では倍以上貰ってますって。騙されてますよ○○（俺）さん」

やべえ・・・次の台詞言ったらもっと兄ちゃんに驚かれる。

俺様「あのー俺コレでも日給上がっててさ、最初は5千円だったんだけどｗ」

チーマーの兄ちゃん、驚くよりも呆れていますｗｗｗ

当時はバブル経済と言われ、高校生のマックのアルバイトが時給1200円貰ってた頃の話ですよ。


働いていた所は、元々ｶｰﾁｬﾝからの紹介の創価学会員の人で、俺が高校生の頃から知っていた人だったんだよね。
最初に「まずは5千円から」って言われても、あーわかりましたって感じだったの。
職人の世界のこと良くわからんかったし、見習いの頃はこんなもんだろうってな。
そんでそれから一年ごとに日給が千円UPって感じだったのだ。

当然生活はキツイ。
当時バブル絶頂期で「３K（きつい・汚い・危険だっけかな）」なんて言われるくらい避けられてた仕事をやっていたのだが、お金は一向に貯まらないわけですよ。
いつかは独立して・・・ってのが唯一の励みだったのだがそんなのもコレじゃ無理。
だからチーマーの兄ちゃんに言われた時は「やっぱそうだったのか」って素直に思ったもの。

だっておかしいと思ったもの。
みんなイイ車乗ったりしてるのに俺は自転車。俺より若い奴でさえバイク乗ってるのに。
車の免許を取るに行く資金すら貯まらない。
結果ローン組んで合宿免許行ってるからね。


そしてよーく考えてみたら俺が勤めている間、親方周辺も変ではあった。
・俺が勤めるまでは足場組立なんか業者に任せてたのに、大量に足場パイプを購入して自分たちで組むようになった
・親方が作業用と自家用の新車を2台買っていた
・家を増築
・息子はなんかでかいバイク買ってもらってた

やけに羽振りがイイでやんのｗ
んで俺は自転車。



取り合えず合宿免許から帰ってきて、１カ月ほど悩んでから辞めことを決意した。
ここまで読んでいると親方が悪人のように見える人がいるかもしれないけどそうではないんだ。
温厚で明るい誰から見ても『イイ人』って感じなんだな。
だから俺はずっと信じて言うとおりにしてたし、１７で家を出た俺としては父親代わりのように慕っていたんだわ。
そんな人の元を辞めるって決めるのは相当悩んだよ。
でも自分の中で生まれた親方への疑念（俺から搾取している）を消し去れなかったんだな。


でも辞めるつもりだって親方に言った。
今の給料では貯金もできない事。
先が見えない事も。


話しを聞いた親方は俺に言ったよ。





「１万２千円でどうだ？」




その瞬間に理解したのさ。

ああ、この人は俺を独立させる気なんかないんだって事が。
つーか考えてもいないんだって事が。


俺は単に親方を儲けさせる為の従業員でしかなかった。
やっと理解したよ。


道理で見積もりや支払い・集金の時に、俺を車の中で待たせていたはずだわ。
幾ら儲けてとかバレるの困るもんね。

俺は親方に笑顔で「もう辞めるの決めてしまったんで。すみません」って言ったよ。

それから何時も通りに仕事をして、何時も通りに親方と過し、俺は仕事を辞めた。



そしてそれから１年以上の間、俺は人間不信になり引きこもる事になる。
もう、職人になるのも嫌だった。
もう夢なんか見ないから、穏やかに暮らせていけばイイから。
そんな気持ちに落ちていた。



もうバブル経済なんか終わり、就職氷河期に突入していた。





今思うと、俺はガキで世間知らずで甘ちゃんだった。
ショックを受けて引き込んだけど、親方だって家族があるし他人の俺なんかに構わず金儲けに走ったことは当然だったんだろうな。
世間を生きる中で善人を当てにしてどうするって話だ。
俺が親方の善意を当てにせず、よりしたたかに生きるべきだったんだなって思う。


誰が言ったか知らんけど、世の中には「利用する人」「利用される人」に大きく分けられるんだそうな。
どうやら俺は利用される人ってモノのようだ。
現在働いているところも、今は残業・休日出勤でしんどいながらやっているけどさ、暇になったら去年の12月の様に遠慮なく人が解雇されるわけで、俺が切られる立場になってもおかしくはないよね。


おっさんとして若い人に言えるのはコレくらい。
『利用する人になってください。それができないなら利用されない人になってください』

何を以って『利用』と考えるかは人それぞれかも知れないけどね。

俺みたいに利用され続ける人間でも、楽しかったり嬉しかったりする時はある。
ただその幸せは守らなければいけないほどのもんじゃないわ。
固執しなきゃいけないものじゃない。

しかり利用する人よりも楽な人生なのは確か。

どっちがイイ人生かは、俺が利用する側になった事がないのでわからんけども、少なくとも守らなきゃいけない程のものができるんじゃないかなとは思う。利用する人生の方がね。
苦労も沢山あるんじゃないかな。

少なくとも日本が資本主義経済である以上、何かを得るには何かを利用しなきゃいけないと思うので、若い人達はそっちを目指したほうがイイと思うよ。

何となくだけど。