2枚の写真が手紙に添えられていた。


大学でアスファルトに絵を描く授業があったらしく、1枚は2匹の猫の絵が寄り添っている写真だった。
手紙には『○○の事を考えながら描いたよ！』と書かれていた。
寄り添う猫は幸せそうな笑顔だった。

2枚目の写真を見た。
そこには絵を描いている彼女が、セルフ撮影で楽しそうに笑っている奴だった。
『凄く楽しかった』と書かれた手紙を読みながら、俺は泣いた。

その2枚目の写真。
写真からは、彼女は他の学生から随分離れたところで1人で描いていたのが見て取れたの。
楽しそうな顔で写っている彼女から離れたところに、ワイワイと仲間で楽しそうに課題をしている姿も写っていたのさ。
他の学生達の楽しそうな交流から離れ、俺だけを見て俺だけのことを考え笑っている彼女が、何故かせつなく見え泣いた。

俺みたいな男にこんなに一生懸命で。
離れているのに一途で。
そして真っ直ぐで。

それまで色々あって、他人に踏み込めない、本気で向き合えない、自分の中の心の氷みたいなのが溶けていく感じがした。
仲間を作って楽しいはずの学生生活を捨て、俺のことだけを考え、俺だけに向き合って過ごしている彼女に救われた気がした。
きっと初めて他人に愛されている事を実感できたんだと思う。


この時、やっと俺は本気で向き合っていこうと思ったんだよね。
付き合ってから半年以上経ってたけど。
人を愛する事を教えてもらった気がする。
だから本気で幸せにしたいと思った。
もし俺がダメでも、彼女だけは幸せになって欲しいと思った。
心から思った。




これがもう7年前の話。






そして現在。


昨日、元彼女さんから電話がきた。
元彼女さんなりの事情を聞いた上で伝えたよ。


『お母さんと和解できるまで連絡してくんな』


そう言われるのを薄々分かってたようで「わかった」と素直に応えた。
直ぐに俺に連絡できなかったのも、俺にそう言われ縁を切られるのが怖かったそうだ。
自分が家族にやってしまった事の重大さはわかっていた。
今の自分はそうするしかなかったと、泣きながらごめんなさいと家族に向けて謝っていた。

俺は
「どんなに時間が掛かっても諦めないで和解する努力をしなさい」
「どんなに忙しくても辛くても、そして読んでくれなくても家族に向けて毎週手紙を書きなさい」
この2つを約束させ、今までの相談役を終えた。


最後に「んじゃ頑張れよ」と伝え電話を切ろうとした。

その時元彼女さんが俺に言った。





「そっちこそ頑張ってイイ人見つけなさいよ」






うっさいですｗｗｗｗ